2017年1月26日木曜日

教育現場でチャットツールを使うメリット・デメリット

slack.comより

仕事でのコミュニケーションツールは電子メールが一般的でしたが、ここ数年はチャットワークSlackなど、ビジネス向けのチャットツールの浸透が進んでいます。特にIT関係の企業では使っていない会社な皆無だと思いますし、他の業種でも活用が進んでいます。

なぜメールではなくチャットツールかというと、メールよりも素早いやり取りが可能になり、効率良く仕事ができるからです。

となると、教育現場でもチャットツールを使えば良いのでは、という考えが生まれると思います。そして、実際に使用している例もあるでしょう。

日本発のチャットツールChatworkを導入している大学はいくつかあります。




この記事では、教育現場でチャットツールを使うことのメリット・デメリットを考えます。

前提

教育現場といっても小学校から大学までいろいろありますが、ここでは筆者の働く大学を例に出してみます。ただ、教育現場全般に通じる点もあるかと思うので、大学関係者以外もどうぞご覧ください。

そして教育現場と言っても、2種類の関係性が考えられます。1つは教職員のみのコミュニケーションです。もう一方は、教職員と学生(生徒)とのコミュニケーションです。両者は明らかに質が違うので、分けて考えてみます。

教職員間

まず、教職員間でチャットツールを使うことのメリット・デメリットを考えてみます。

メリット

  1. 応答のスピードが速くなる
  2. 情報共有が円滑になる
  3. 様々な連携機能を使える
メリットは、一般企業で導入する際と同じだと思います。チャットツールであれば、メールと違って件名や冒頭の定型文(「お世話になってます」など)を入力する必要はありません。カテゴリごとに決まったグループに投稿する仕組みなので、CC(同報)に誰を入れるかで悩む必要はありません。こういったことで、メッセージのやり取りは遥かに速くなるはずです。

また、メールよりもより気軽に投稿できるため、情報共有が円滑になります。グループメンバーは基本的に全員がメッセージを見るので、メールのように一部のひとにしか情報がいかない、といったことを防げます。

最後に、ChatworkやSlackといった有名なチャットツールは、他のツールとの連携が豊富です。Googleカレンダーと連携して自動リマインダーを設定したり、Dropboxと連携したファイル共有ができるなど、業務効率化につながる仕組み作りができます。

業務効率化という点と、情報共有による様々なシナジー効果には期待ができるでしょう。

デメリット

  1. 大事な情報が流れていってしまう
  2. 組織全体での定着が難しい
  3. メールとの使い分けが難しい
  4. 距離感が取りづらい
チャットツール自体のデメリットとしては、グループ内にどんどんメッセージが流れてくるため、放っておくと大事な情報が流れていってしまう、といった点があります。大切なメッセージに目印をつけられる「スター機能」「スレッド機能」などは付いているのですが、例えば一週間くらい仕事を離れると未読メッセージが大量に溜まっていて、どれが大切なお知らせか分からなくなってしまいます。メールだと一応ひとつひとつ開封する、件名で重要性を判断する、といったことがやりやすいので、この点はチャットツールの劣る点です。

次に、大学は巨大組織です。私の勤務先は教職員だけで1万人います。部署内ならともかく、大学全体で導入するとなると、その労力は測り知れません。また部署内で導入するにしても、組織全体で導入していなければ結局メールも併用することになり、チャットツールが浸透しない可能性があります。まあ電子メールが何だかんだで浸透したように、使い始めれば問題はなくなるのかもしれませんが。

あと、大学特有の問題ですが、教職員の間には独特の距離感があったりします。教員同士もそうですし、教員と職員の間も、同僚ではあるけれどもいわゆる会社員同士とは違う関係性があります(どう表現したらよいのか・・・)。チャットツールは距離感としてはメールよりもだいぶフランクになるので、この距離感が教職員に適しているかというと、何とも言えません。

教職員と学生の間

次に、教職員と学生の間でチャットツールを使う場合のメリット・デメリットを考えます。これは、主に授業や研究室内で使うことを想定しています(学生支援業務で使うパターンは、今回は除きます)。

メリット

  1. 学生の主体性を引き出せる
  2. 共同作業がしやすくなる
効率化の面もありますが、教育上の効果も期待できます。例えば大教室での授業だと、発言をするのはなかなか勇気がいりますよね。チャットツールでも発言をできるようにすれば、どんな学生も気兼ねなく自分の意見を投稿できるでしょう。その投稿を見ながら、教員がこれはと思う意見について、指名して詳しい意図を引き出す、といった使い方もできます。

またゼミなどの少人数の場面でも、プレゼンテーションの準備やPBL(Project Based Learning)の授業で共同作業をする際に、コミュニケーションがとりやすくなります。学生はもとよりLINEやMessangerでやりとりをしていると思いますが、それに教員が割って入るわけにもいきません。チャットツールをオフィシャルなツールとして、そこでやりとりをしてもらえば、教員が適宜フィードバックをして共同作業を進めることができます。

デメリット

  1. 学生との距離感
  2. 学生同士の問題
デメリットは、またも距離感の問題です。大学生はいくら大人だからと言っても、教員と学生という立場は変わりません。チャットツールは気軽にやりとりができる分、気をつけてないと行きすぎた言動をしてしまいます。それが学生にとってはアカハラやセクハラと取られる場合があります(メールでもアカハラ・セクハラは可能ですが・・・)。大学生ではなく中高生相手ならなおさらです。

また、学生同士でもLINEグループでのイジメに見られるように、しっかりと規律を持っていないと問題が発生しかねません。

学生は勝手にグループを作れないように設定する、ダイレクトメッセージは送らない、など何らかのルールは決めておくべきでしょう。

他のデメリットは、あまりないと思われます。今の学生であればチャットは使い慣れているので、導入にもさほど障害はないでしょう。

まとめ

以上、教職員間と教職員・学生間で分けて、チャットツール導入のメリット・デメリットを考えてみました。

総じて、教職員間でのチャットツールの導入にはメリットと同じくらいデメリットもありそうです。組織の体質やトップの考え方に大きく拠るところだと思うので、チャットツールの導入は慎重に考えたほうがよいでしょう。小規模な私立大学などなら、やりやすいかもしれません。

逆に教職員・学生間でのチャットツール導入は教育上のメリットがありそうです。セクハラ、アカハラ、いじめなど情緒的な問題さえ防げそうであれば、導入を積極的に検討すべきと思われます。特にビジネス向けチャットツールを使いこなすスキルは、就職後も活かすことができます。スキル教育の意味でも、利用を考えてみてもよいでしょう。


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