2017年6月10日土曜日

開幕!カザフスタン・アスタナ万博とカザフスタンのこれから

先日、大阪が2025年の万博開催地に立候補した事がニュースとなりましたが、今年の万博がどこで開催されるか、ご存知でしょうか。今年は、カザフスタン共和国の首都・アスタナで開催されています。6月9日に開会式が行われ、会期は6月10日から9月10日まで、3ヶ月間です。

カザフスタンとは?アスタナとは?

カザフスタンはソ連崩壊後に独立し、2017年で独立25年を迎えます。ロシアの南、中国の東に位置し、国土面積は世界第9位という広さに対し、人口は約1,700万人です。天然ガス、石油、レアメタルなどの天然資源が豊富で、2000年代に急激な経済発展を遂げました。ただ、ここ数年は資源価格の下落により、経済は少し減速しています。


 カザフスタンのGDP成長率

主要民族はカザフ人で、人口のおよそ7割を占めます。カザフ人はアジア系の顔立ちで、日本人ともよく似ています。最近だと、「美しすぎる女子バレー選手」として話題になったサビーナ選手が話題になりました。カザフ人以外にはロシア人や朝鮮人など多くの民族が暮らしています。 フィギュアスケートのデニス・テン選手も朝鮮系カザフスタン人です。
サビーナ・アルティンベコワ選手(instagramより)

そのカザフスタンの首都がアスタナです。もともとカザフスタンの首都は、南部のアルマティでしたが、1998年にアスタナへ遷都されました。アルマティでの大地震や、ロシア系住民の多い北部の分離独立を警戒したためなど、遷都の理由は様々あるようです。

遷都の前は、アクモラという名前の街でした。当時の人口は25万人程度で、遷都後に急速に街が整備され、現在は80万人を超えています。なお、アスタナの新都市を設計したのは、コンペで優勝した日本の建築家・黒川紀章氏です。

新たに作られた都市のため、市内には斬新な形状をした、近未来的な建築物が多々あります。

首都・アスタナ

アスタナ万博のテーマ

アスタナ万博のテーマは「Future Energy」。自然エネルギーの活用、エネルギー利用の効率化など、未来のエネルギーのあり方を考えることが焦点となっており、100以上の国・地域と国際機関のパビリオンにはそれぞれのアピールしたいテクノロジーや取り組みが紹介されているようです。

アスタナ万博の公式ページ(英語)はこちら

会場図もありますが、日本で行われた大阪万博や、数年前に行われた上海万博、ミラノ万博ほどの規模は無いように見えると思います。

それもそのはず。ひとくちに「万博」といっても、5年に1回程度開催される大規模な万博(登録博)と、専門的なテーマに絞った万博(認定博)があり、アスタナ万博は後者の認定博の方です。認定博は、会期や会場面積などに制限があり、分野も絞られた万博です。なので、規模もテーマも限定的です。

とはいえ、国際的な大規模イベントであることには変わりなく、かなりの労力と資金が投じられ、一般の人が楽しめるようになっています。

テーマに沿ったパビリオンのほか、シルク・ドゥ・ソレイユの公演など文化イベント、その他様々なイベントが開催されるようです。

なお、日本もパビリオンを出しています。日本館の特設サイトはこちら

カザフスタン国民の熱狂は?

日本では、かつての大阪万博が国民の熱狂を呼び、その後の高度成長期へと繋がった象徴的なイベントでした。前述のように「認定博」とはいえ、新興国であるカザフスタンでの万博開催となれば、さぞかし国民が熱狂していることでしょう・・・と思いきや、案外そうでもないようです。

東京オリンピックがいまいち盛り上がらず、開催に反対する都民が一定数いるように、アスタナ万博も冷めた目で見ているカザフスタン国民もいます。

これには理由があって、アスタナ万博は、プロジェクト開始から様々なスキャンダル、トラブルに見舞われてきました。




この記事によると、アスタナ万博をめぐって次のようなスキャンダル、トラブルがあったようです。関係者の自動車事故、アスタナ万博のための国策会社幹部による組織ぐるみの汚職、建設中のパビリオン内でバーベキューして(ネットが)炎上しちゃった問題、マスコットキャラクター変更論争、さらには吹雪による建設中パビリオンの倒壊・・・。
これはさすがのカザフスタン国民もゲンナリするはずです。

まあ東京五輪も、スタジアム問題、会場問題、ロゴ問題、費用負担問題、無償ボランティア・・・とこれまでも問題山積でまだまだ問題は出てきそうなので、よその国のことは言えませんけどね。今のところ、汚職が無いだけましでしょうか。

批判はさておき、多くのカザフスタン国民は「やるなら成功してほしい」とは思っているはずです。アスタナ万博の成功を祈ります。

万博後、カザフスタンはどこへ向かうのか

カザフスタンの向かう方向性は明確です。カザフスタン政府は「Kazakhstan 2050」という、2050年に向けた国家目標を定めています。

「Kazakhstan 2050」の特設サイトまであります。
これによると、カザフスタンは「2050年までに一人当たりGDPを60,000USドルまで増やす」という目標を掲げています。2016年の日本の一人当たりGDPが38,917ドル(世界22位)なので、かなり野心的な目標と言えます。なお、2016年のカザフスタンの一人当たりGDPは7,452ドルで、世界77位となっています(参考)。

また、経済成長だけではなく、「2025年までにカザフ語をキリル文字からラテン文字へ移行する」といったアイデンティティーに関わる目標や、「水問題の解決」など環境・国際関係に関わる目標も掲げています。

カザフスタンはいま、岐路に立たされていると思われます。しばらく経済成長を支えてきた天然資源価格の上昇は終わりました。また、独立から25年、大統領としてカザフスタンの成長をけん引してきたナザルバエフ大統領ですが、高齢となり世代交代の必要に迫られるでしょう。

アスタナ万博の遺産を活用し更なる発展へと舵を切れるか、それとも負の遺産として持て余し、停滞の時代を迎えるのか。カザフスタンの今後に要注目です。


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